ペットの食事と仕事 豆知識
コロナ禍でペットを飼い始める人が増えているというニュースを目にします。実際に、新規飼育頭数は増えているというデータもあります。
一方で、2021年6月1日から改正動物愛護法が施行され、
・動物虐待に関する罰則の強化
・生後56日以下の犬猫の販売を禁止 ※ただし、日本犬は例外
・動物取扱業者に対する数値規制
などが強化されることとなりました。
このように、動物たちを取り巻く環境が変化している中、犬の保護団体【Dog Shelter】の大阪支部で、柴犬の保護をメインに活動している【Dog Shelter Osaka】を訪ね、代表の奥谷友紀さんにお話を伺いました。
▶ dogshelter_osaka インスタグラム
奥谷さんは、東京でトレーナーとして活動する傍らで、Dog Shelterさんの活動に参加され、その後、大阪に引っ越したことをきっかけに、2018年4月に【Dog Shelter Osaka】立ち上げました。これまでに、約30頭の柴犬とラブラドール・レトリーバーとトイプードルを譲渡されたそうです。現在は、柴犬が6頭、自宅兼シェルターでお世話をされています。
おりょう(メス)……推定4歳、繁殖場より、2020年9月保護
ぴんく(オス)……推定2歳、繁殖場より、2021年4月保護
けんぴぃ(メス)……推定2歳、繁殖場より、2021年6月保護
きぬ(メス)……推定3歳、繁殖場より、2021年6月保護
ふじこ(メス)……3〜4歳、繁殖場より、2021年7月保護
びわこ(メス)……3〜4歳、繁殖場より、2021年7月保護
けんぴい
おりょう
右/きぬ、左/ぴんく
びわこ
ふじこ
長引くコロナ禍で、保護の状況はどうですか?
私のところでは、「コロナだから引き取りが増えた」というのは感じていません。今うちで引き取っているほとんどが、繁殖場からの保護です。繁殖場からの保護はさまざまなケースがあり、管理できずに増えすぎた繁殖場の廃業や、数値規制の影響による数が増えています。
実際に今年の4月には、繁殖場の管理不足によりなんと300頭に増えてしまい、運営が困難になって引き取り依頼がありました。そこにはまだ200頭以上の犬たちが残っているんですよ。ひどい話です。
譲渡の状況はどうですか?
今は、SNS経由やオンラインでの譲渡会もあります。気軽に参加できるので、ぜひ、のぞいてみてほしいです。
シェルターや団体さんにはさまざまな形や考え方があると思うのですが、奥谷さんのところではどのような運営をされていますか?
【Dog Shelter Osaka】は、家庭犬として次の犬生を幸せに過ごしてほしいとの思いから、柴犬の性質、その子の性格や行動を観察し、ていねいにケアするように心がけています。「無垢」で何も知らない犬たちを、時間と手間と愛情をかけて家庭犬としての経験を積み、学び、預かりボランティアさんのご協力の元、癒やしていきます。そして、里親の希望者さんの環境など考慮し、お互いに合う形で、譲渡していきます。
引き取ってすぐは、隔離していますが、病気や感染症などのチェックが終われば、少しずつ慣らして、人がいるときは基本フリーで全員生活しています。実際に、何も知らなかった犬たちがお散歩を楽しんだり、おやつを食べたり、笑顔を見せてくれるようになったりと、変化があります。
今いる、「ぴんく」もそうです。引き取ったときは常同行動が見られ、病院でもパニックになるなど、不安定でしたが、今はそれも少なくなり、ほかの犬たちとも問題なく過ごせています。ただ、ていねいにケアをしようと思うと、頭数が引き取れないのです。なので、今もっとも必要としているのが、預かりボランティアをしてくださる方です。
預かりボランティアになるにはどうすればよいのでしょうか? 必要な資格などはありますか?
団体さんによってさまざまですが、【Dog Shelter Osaka】では、面接をさせていただき、活動の説明をしたのち、環境確認(犬を飼える環境かどうか)や、ケア(食事、医療、散歩など)が可能かどうかなどを確認し、お願いするようにしています。また、ブログやSNSで譲渡のための発信をしてもらうことも役割のひとつになります。最初は不安に思われている方でも、実際やってみて、しっかりお世話をされている方たくさんいらっしゃいます。
そのほかに、今必要なものはなんですか?
預かりボランティアだけでなく、搬送サポートや同行などお手伝いしてくれる方も必要です。車での引き取りなので、一人で行くには限界があり、それをサポートしてくれるだけでも助かります。
柴犬専門のシェルターとのことですが、柴犬と暮らしたいと思っている方にメッセージをお願いします。
個体差はありますが、犬種の傾向や特性を知った上で、柴犬と暮らすかどうかを決めていただきたいと思っています。それを理解した上であれば、最高のパートナーになります。あ、1年中毛は抜けますよ^^
保護犬を迎えようかなと思っている方に、メッセージをお願いします。
「保護犬のイメージ」は、実際に会っていただくと変わります。まずは会ってほしいです。自分の目で見て感じてほしいと思っています。コロナ禍だけど……。存在を知り、会っていただくことで、新しい気づきがあるかもしれません。そして「譲渡して終わり」ではないので、団体は「お里」だと思って、何かあったら相談してください。
最後に、この記事を見てくださったみなさんへのメッセージをお願いします。
日本は遅れているわけではない、日本ならでは動物愛護、福祉のかたちをみんなで作っていきましょう!
当講座のグループ会社が運営している【GREEN DOG】のスタッフが、奥谷さん(Dog Shelter Osaka)の預かりボランティアをした経験があり、スタッフにも話を聞きました。
~預かりボランティアをやってみて~
3歳の柴犬(こてつ)の保護犬ということではじめは構えていました。ブリーダー崩壊による保護のため、世間知らずの成犬。迎えてすぐの頃は、大人しく、遊び方も知らなかったのですが、我が家のパートナー(ミックス)との関わりが大きく、こてつの思考を変えてくれたようです。毎日楽しそうに遊んでいました。大きな問題もなく、想像以上に甘えん坊のこてつ。いろいろな経験をもっとさせてあげたかったなと思いました。里親さんが見つかり、離れることが決まったときは寂しい気持ちでいっぱいになりましたが、環境が許すなら、引き続き、預かりボランティアをしたいと思います。
一緒に会社に出勤しているこてつの様子
こてつ
取材を終えて……
奥谷さんのところ(Dog Shelter Osaka)には、奥谷さんのパートナーのひなたちゃんとみなみちゃんを入れて、現在、8頭の柴犬がいます。犬好き、柴好きにはたまらん環境です。保護された犬たちでも、そこからの育て方で、幸せな犬生が待っています。保護犬だから、ペットショップで売られている犬だからと、考えるのではなく、どの犬もどの猫も幸せに暮らす権利があり、どの犬もどの猫も、素晴らしい命です。日本にいるすべての犬や猫が、幸せな犬生、猫生を過ごすためにも、正しい知識を身に着けたプロを私たちはサポートしていきたいと思います。