ペットの食事と仕事 豆知識
3/14に開催されたペットフーディスト養成講座のスクーリング「病気と食事管理」のレポートをお届けします。
講師の奈良なぎさ先生より、主な病気と消化器症状の関係性を中心とした、病気と食事管理について講義していただきました。
原因を探して対処をすることで、病気予防に繋げるための基礎知識も学べ、ペットフーディストとしての実践的な知識が得られる内容でした。
病気と食事管理
テキストの流れに沿って、肝臓病、腎臓病、尿石症、心臓病など疾病ごとの食事管理についての説明をしていただきました。
その中で、「食欲不振、下痢、便秘、嘔吐」は、ほぼ全ての疾病の症状として挙げられ、私たちが、まず最初に想定する消化器病以外にも、さまざまな疾患でも同様に起こりえることを比較整理し、単に消化器の病気だけの症状ではないことに気付きや理解が深まる構成でした。
これを知ることは、オーナーとして言葉が話せないパートナーの健康管理をする上で、隠れた病気を見逃さず、素早い対処をすることにつながり、また、ペットフーディストとして食事のアドバイスを行う際にも、様々な原因があることを心得ることにつながる大切なことだと感じました。
奈良先生によると、違う病気でも共通する主な症状が「食欲不振、下痢、便秘、嘔吐」であることは、すなわち
「食べ物」→「消化」→「吸収」→「代謝」→「排泄」
が速やかに行われるかどうか。
それが、病気の時の食事管理には重要になり、病態と個体に応じた食事管理が求められます。
「食事の選択」「与え方の工夫」「水和状態の維持」。これを踏まえることで、食事療法食中心になり出来ることは少ない中でも、方向性や解決策のヒントが見つかりやすくなることを学びました。
病気の食事療法については、食事療法食のペットフードにおいての具体的な成分を挙げた栄養管理の特徴についての説明がありました。
例えば…
■肝臓病は、十分なエネルギーの確保が必要で高脂肪食が適応ですが、脂質代謝異常の場合は、低脂肪食にする必要があること
■尿石症における、その原因と長期的な食事管理のコツ
さまざまな疾患に関して、奈良先生のご経験に基づいた実例を随所に交えていただき、より具体的な対処方法を学ぶことができました。
特徴を知ることで、複数の療法食を用意することが可能になりますし、食べてくれない場合に代用できるフードを探すための基本的な知識にもなります。オーナー様へのアドバイスや、自身のパートナーに療法食を与えることになった時にも、とても心強い知識となるでしょう。
食欲不振、下痢、便秘、嘔吐が意味することは?
次に、ほとんどの疾病に共通する「食欲不振・下痢・便秘・嘔吐」について、「下痢や便秘」の発生原因や、「便と食事の関係」、「便と病気の関係」など、詳しいお話がありました。
「食べない」のか「食べられない」のか。
食欲不振とは、身体の中で代謝異常が起き、「食べられない」状態を指します。
排泄物を観察する習慣を持つことで、食事のバランスの良し悪しや、病気の早期発見の気付きにもなります。
様子を見てよいケースと、動物病院に急いで連れて行く必要があるケースの判断方法を知ることで、早期対処が可能になり、病気の予防にもつながることを学びました。
皆さんからの質問
後半は、事前に収集していた「皆さんからの質問」にお答えいただきました。
Q1:進行した心臓病で、進められる食材やバランスはありますか。
A:心臓病が進行すると消化吸収率が低下しますので、消化の良い食材を使用し、タンパク質量を少し多めに設定します。併発疾患があり高脂肪食に耐えられない場合は、低脂肪食にし、炭水化物源から十分なエネルギーを確保することが重要になりますが、低脂肪による栄養吸収不良性の下痢にならないような調整が必要になります。
食材としては、米、鶏ムネ・ササミ、豚ヒレ、カッテージチーズ、ヨーグルト。状態に応じて、おやつのボーロなど。
毎日同じものを食べられない場合は、適正体重が維持でき、食べられるものを探していくということが重要になります。
Q2:高齢犬になると心臓・肝腎・癌などと併発しますが、食事を管理するうえでどの疾患について、一番気を付けるとよいでしょうか。
A:通常食事管理は、命にかかわる順に優先していきますが、どれも命にかかわる疾患で食欲不振を生じる共通点があります。その場合、「何を食べることができるか」をもとに、体重と筋肉量を落とさない食事を見つけることが必要になります。
タンパク質や脂質のバランスが個体にあったフードを何種類か用意し混合することも可能です。オメガ3脂肪酸のサプリメントの併用もお勧めです。
Q3:尿路結石(シュウ酸カルシウム)の場合、手作りご飯で気を付けることがあれば教えてください。
A:体内でシュウ酸に変わるビタミンCを多く含む食材、カルシウムやシュウ酸を多く含む食材(さつまいもやホウレン草)の与えすぎに注意します。
シュウ酸は水に溶けるため、下茹でをすることで、シュウ酸の量を減らし与えることができます。さつまいもをおやつとして与える場合は、電子レンジではなく、輪切りにして水で茹でて加熱します。
また、ペット用のおやつにはカルシウムが含まれていることもあるため、原材料をよく確認してください。
編集後記
我が家のパートナーの実体験として、同じ疾患(心臓病)でも消化器症状が出るパートナーと出ないパートナーがいて、状態の把握が難しいと感じていました。
他の臓器の不調が重なっている可能性もあると思いましたので、まずは、良いうんちが出る食事への調整や、宿便を出す方法を試してみたいと思います。
お客様のご相談の中でも、複数の疾患が重なり、食欲が落ちてしまうケースが多く、その場合の具体的なアドバイスもとても参考になりました。
シニア期や病気があるパートナーだけではなく、どのライフステージでも病気にならないためのアドバイスにつながる実践的な内容のセミナーでした。
ペットフーディスト受講生 笹嶋由美子